星を読むひと

最初に、私には、政治のことはよくわからないです(勉強不足でごめんなさい)。でも今回の、自民党総裁が岸田さんになってゆく流れをマドモアゼル愛先生のYouTubeで毎日追っていて、1ヶ月前から愛先生が言い続けていたことが、ばんばん的中していく中で、今日に至って、先生の才気に、あらためて鳥肌が立ちました。

「私は、本当にそうなのかな、大丈夫なのかな、とは思うのだけれど、星の上でそうなのでね。そして、いつも私より星の方が正しいので」

占星術家というのは、なんて、なんて、尊いご職業なのでしょうか。時代や国が違ったら、国家君主や王族に仕えるようなお立場であったことでしょう。ご本人はそれを望まないかもしれませんが。今でもそういった依頼はあえて断って、あくまでも市井の人々の為に、星を読んでいらっしゃるのかもしれません。

国家や大企業が大きな決定をする際や催事の日程を決める際には、占星術師が一定の役割を担っていることは知られた話です。インドでは占星術は国家機関で研究されています。医療占星術という分野もあります。明治時代の話でしたでしょうか、イギリスの王族の方が、日本の天皇陛下のお付きの占星術師はどちらの方ですか?と尋ねられて、誰も何も答えられなかったというエピソードを耳にしたことがあります。占星術は、統計学の要素を多く含んでいます。こういう星の配置になったら、こういうことが起こる、ということを読んでいきます。こういう星の配置の時期に生まれた人には、こういう星の配置の時分に、こういったことが起こる傾向がある、といった具合に。

人は、星どころか、地球という一惑星の、自分が居住する一部の地域が曇天になっただけで、頭が痛くなったり、眩暈がしたりします。女性の生理周期は月の満ち欠けと連動していたりします。満月の日の事故率は高いそうです。そんな私たちが、さらに何百倍、いえ、何千倍、何万倍も大きな天体の動きに、影響を受けない、と思うことのほうが、傲慢で、私にはとても信じられない。そして、傲慢な方々は一様にして、幸せそうには見えません。ということは、私が幸せを感じられなくなっているときは、きっと、傲慢になっているのですね。失礼、話が逸れました。

私は、科学も占星術も、人間の知的営みの産物として、どちらの恩恵も受けていますし、どちらも素晴らしいと思っています。両方とも非常に論理的な作業で、かつ、緻密に積み上げられた論理的作業ののち、本当の最後の最後の最後には直感がものを言う行為であると考えます。違いは、科学には因果関係の証明が必要だけれど、占星術に因果関係はあっても証明をする必要はない、ということでしょうか。占星術で、なぜそうなるか、ということは扱わない。ただ、こういう星の配置のときに、こういうことが起こる、という事象のみを扱います。(もし違いましたら詳しい方ご指摘いただけましたら嬉しいです)

とても残念なことに、現代の日本では、そして近代文明においては、占星術は、下手したら、インチキのような、扱いを受けることもあるようです。インドには国立の研究機関があると前述しましたが、日本にお生まれの占星術家は、民間人としてのあり方の中で、自身の直感のみによって占星術を選び取り、先人から学び、天才から天才への引き継ぎが行われる中で、茨の道を歩まれてきたのでは、と勝手に想像してしまいます。ジャズを含めたポップミュージックが辿ってきた道も似ているかもしれません。(今ではジャズは大学でお勉強する学問にもなりましたが)

星を読む、というのは究めて知的な作業です。大学受験どころではない、信じられないような膨大な量の知識を暗記し、計算し、解釈する。政治、経済、歴史、時事問題にも明るくないといけないでしょう。暗記力、計算力、洞察力、解釈力、そして私利私欲に惑わされないこと。そうでないと、読みがずれてしまうからです。頭は冷静に、心を持って読むこと。なんて尊い職業なのでしょうか。

マドモアゼル愛先生という、太陽が水瓶座にあり、天賦のひらめきを持って生まれた西洋占星術家の、自民党総裁選の行末を鮮やかに言い当てなすった手腕にただただ感激して(素晴らしい映画を一本見終えたような、とても爽快な気分です)思わず書きなぐってしまいました。

以上、太陽が魚座、月が山羊座の(われながらまさに、な文章と人生)一介のファンより、ラヴレターでした。

愛先生、お見事!

(ちなみに、愛先生は、お名前は可愛らしいですけれど、71歳の男性で、日本占星術界の大家であられます)

9月15日、風をあつめて、月に飛ばして

〈プロローグ〉
今夜も桜田(妹の方)だ。私には、愛の生活の呪いがかかっている。金井美恵子でなくて、岡崎京子の方。金井美恵子の愛の生活も彼女の初期の傑作のひとつで大好きだけれど。もちろん呪いとは同時に祝福のことである。

半年ぶり、いや、嘘だ、記憶にない、一年以上かもしれない、に休みができたので(今日やっておかないと後ほど不具合が生じるという類いの用事がなく、人とのアポイントメントもないという意味で。金銭の授受がなくてもコミットメントがあるなら友人と出かける等のプライベートのアポイントメントでも厳密には休みではないように感じる)、今後の展開の為にもいざタブラ・ラサ。こんなのどれくらいぶりだろう!今日は生業については一切考えずに一日を過ごすことにした。音楽と文字だけで綴られたものは生業に近すぎるので100パーセント娯楽という感覚にはならない。私の娯楽は映画と漫画にある。私の視覚は聴覚と言語感覚よりも乏しいので丁度よいのである。

二日前から(つまりAnything Blue横浜公演の前日)どうしても観たいという大きな衝動に駆られていた映画は3本あった。それぞれが、ギリシャ、モロッコ、チベットで撮られた映画だった。二日後には必ず観に行けるのだから!と、意気揚々、ひとつの儀式を終えた状態を想像し、ライブ準備もはかどったものである。ライブの様子は前述したとおりだ。ものすごかった。

ところがどういうことだろう、たった二日後に、これら全ての映画がもう上映されていないパラレルワールドに飛んできてしまうなんて。私は途方に暮れた。シャワーを浴びながら、大澤誉志幸の曲を口ずさんでみたりした。

しかしこんなに長い間映画館に行っていないと干からびてしまう(映画か映画的なものは睡眠導入剤として毎日観ているのだけれど映画館には行けていない)。水を飲みに行かなければ。検索をかけたところ、急げばまだ今日中にそれなりに興味深い2本が観られることが判明した。いちおう軽くネット上のレヴューもチェックする。Rotten Tomatoesで98%!?何かのバグではないかと思ったけれど確かめる為にもひとつはこれに決まり。ブルグ13のIMAX上映に間に合う。2本目はたいして選択肢がない。ベイバイクで移動して次はジャック&ベティだ。

結局比較的馴染み深い文化を持つアメリカと日本の映画を観ることになった。コレットマーレのPAULで朝食のアヴォカドのサンドイッチと、ビオセボンでスナック用のブール・ド・ルージュとルイボスティーも買う。これで準備はOK、6時間はそれほど長くない。

デスティン・ダニエル・クレットン監督『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

爽快!ウェルメイド!くうううううーマーヴェルはオーディエンスが次に望むものをわかってる!痒いところには手が届きかつまさに予想の斜め上をいく作りとはこのことか。アンダーソン・パークのクール過ぎるエンディング曲も含め完璧か…。Rotten Tomatoesに狂いなし。

トニー・レオンとファラ・チャン、そしてミシェル・ヨーの艶やかさ。舞踏のように流れる戦闘シーン。男女の関係はもちろん恋愛だけではない。ヒロインが同時に道化役でしかもちゃんと魅了的。遂にステレオタイプから抜け出したヒロインが現れた。遅いよ世界!でもやってくれてありがとう。サントラにはZion.T、88rising、Jhene Aiko、星野源!まで参加。やはり完璧か….。上映後の高校生たちの反応も可愛かった。ん?でもサントラにヒロイン役のAwkwafinaが参加してないのはなぜ?

ウエダアツシ監督『うみべの女の子』

ポルノよりもポルノ的なもの。90年代後半の片田舎の中高生ってこんな感じ(私は横浜の片田舎出身、横浜は広い)。全ての集約点の9月15日ってAnything Blue横浜公演と同じ日だなあ。はっぴいえんど「風をあつめて」ってFly Me To The Moonのヴァースの和訳と一緒じゃないの。これぐらいのシンクロニシティーは日常の我が摩訶不思議人生。というか、これぐらいのセレンディピティは誰の人生にも必ず起きている。唯一の違いは、気づくか気づかないか。

台風が全てを浮き立たせ、そして洗い流す。結局のところ、世界を揺るがすのはボーイミーツガール。ほんとうのことを言うときは船もカメラもグラグラ揺れて、心臓が飛び出そう。吐きそう。胸が痛い。死ぬか生きるかの通過儀礼はこの社会の14歳にも引き続き存在していると思う。毎日ちゃんと死んでますか?それは毎日生まれ変わるということなので。

〈エピローグ〉
悩める桜田(妹の方)は前日にタロットリーディングをしていたのだ。結果は、そのまま事実の反映である。この問題に関しては、ひとり静かに闘う。猛獣を飼いならす。四面楚歌。果たしていちばん重要な最終的なアドヴァイスとは、「風が吹くのを待て」。もうすぐに、人智の及ばない何らかの力が働いて形勢が逆転する。乾季が雨季に変わる、それは生命の約束、三月の雨。私はただ待つことにした。風マチ。台風がやってくる。

Anything Blue横浜公演を終えて

あまり知られていないけれど、Fly Me To The Moonの歌詞のヴァース部分はこうやって始まる。


Poets often use many words 
To say just a simple thing 
It takes thoughts and time and rhyme  
To make a poem sing 
With music and words I’ve been playing 
For you, I have written a song 
To be sure that you’ll know what I’m saying 
I’ll translate as I go along…

Fly me to the moon
And let me play among the stars

詩人はたくさんの言葉を使うよね
たったひとつの単純なことを言う為にね
考えて考えて、時間を費やして、韻まで踏んで
どうにかして、たったひとつの節を、歌にする
今までに演奏してきた音楽と言葉で
貴方の為に曲を書いたの
貴方が私の言っていることを理解してくれるように
翻訳していくね
あのね…

私を月に飛ばして
そして星々の間で遊ばせて



地元横浜でのアルバム”Anything Blue”公演が終わった。自転車で帰宅しすぐマックブックと向き合いこれを書いている。私は横浜と横浜の人々を愛している。ロジャース&ハート名コンビの傑作のひとつ、”Manhattan”を聴く。都市への愛を歌ったこの曲を聴くと、彼らのどんなラブソングよりもとても切ない気持ちになるのはどうしてだろう。日本に住み続ける限り、私は横浜にいるに違いない。

今夜は私は呆けて録音することもメンバー写真を撮ることも忘れたので、せめてもの記録に、苦肉の策として、文章を書くことにした。渋谷JZ Brat公演の際にも同じことを書いたのだが、これはライブではなかった。いつも行っているあの行為がライブだとしたら、この出来事はライブではない。

Blue Lotusのピアノソロの間、一瞬の気の緩みで、目の潤いが増してしまい、Anything Blueに至っては時間差攻撃で今度は鼻からいつ水滴が落ちてしまうのかと、気が気でなかった、と言えば大袈裟であるが、顔面に多少の異変があったのは確かである。自作曲Anything Blueに対する感慨はもう何もない。あの曲はドキュメントであって、全てノンフィクションだけれど、産み落として以降、あの曲の中の物語はどんどん私から離れていって、今では全くもって私のものでなくなって、世界に帰属するものとなった。

アルバム”Anything Blue”は、トオイダイスケが、加藤咲希と言う「ジャズシンガー」をプロデュースしたアルバムである。私は彼にプロデュースされたという客体であるのだけれど、彼も私のプロデュースをすることを私に選ばれた客体である。もちろん彼はプロデュースをするという本来の分かりやすい主体であって、私は彼にプロデュースされることを自分で選んだので、私も主体である。プロデュースをする、される、という行為は、お互いが能動態であり、受動態である、そしてそれは入子構造になっている、などということを、あらためて思ったりした。

演奏直後の、興奮冷めやらぬフルーティスト小川恵理紗ちゃんの一言、「トオイさんって、天才ですね、天才なのですね、天才だ!トオイさんの音楽をもっともっともっともっともっと世界中のたくさんの人たちに聴いてもらいたいですね!」

そのとおりだね、恵理紗ちゃん。そして君の素敵なフルートとビートボキシング(今日は封印させてしまったけれども)も、きっともっともっともっともっともっと世界中のたくさんの人たちが聴いてくれるようになるよ。君たちは本当に素晴らしい。

私は人に恵まれていて、師匠の菊地成孔さんのお言葉を拝借するならば、ただ歩いていると、向こうから勝手に天才たちがやってくるのでした。ご来場下さった愛すべき皆さまと、音楽のカミサマに感謝します。

アルバム”Anything Blue” 発売記念ライブ第二弾!地元横浜編

大切なライブのお知らせです❣️

ジャズ歌手としてのデビューアルバム”Anything Blue”
発売記念ライブ第二弾💙✨地元横浜編

9/15(水)関内メグスタ

横浜市中区相生町5丁目86番地 第2ホームベースビル402
Tel 045-228-8869

加藤咲希 (Vo.)
小川恵理紗(Vo.)
トオイダイスケ(Pf.)

Open 17:30
1set 18:20-19:30
MC ¥4000

私のジャズシンガーとしてのデビューアルバム、「エニシング・ブルー」発売記念ライブ第二弾です✨

東京、神奈川近郊でのレコ発ライブはこれが最後になります。

おかげさまで、7月に開催しました渋谷JZ BratでのCD発売記念ライブにはたくさんの方にお越しいただいて、とても感謝しております😌💗

でも地元横浜で、10年以上前の、ライブデビュー時期から応援して下さっている方々には、場所や時間やその他のご都合で、お越しいただけなかったという側面もありました。

そこで急遽、横浜でもレコ発をやらせていただくことになりました❣️

今回は、地元横浜のジャズ界のライジングスター🦄🌟ビートボキシングフルーティストの小川恵理紗ちゃんをゲストにお迎えして、プロデューサーのトオイダイスケさんと一緒に、もう一度、Anything Blueの世界を紡いでみます。

恵理紗ちゃんは、アルバムの中でも、とても大切な2曲、Aguas de Marçoと、Can’t Stop The Showで素敵なフルートを吹いてくれています。

菊地成孔さんにご参加いただいた渋谷JZ Bratのときとはまた別の形で、Anything Blueの世界を描きます。未来に繋がるライブにできますように🪄

ぜひお越しいただけたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

主催:コグマサウンド