続・手術後記

たくさんのお見舞いと励ましのお言葉をありがとうございます!

退院して1週間が経ち、昨日は通院日でした。手術箇所に血だまりもなく、傷口は順調に塞がってきているとのこと。少しずつ可動域も広がってきていますし、鎮痛剤を飲まないで済む時間も増えてきています。くるっと寝返りを打つまではいかないけど、寝る向きを変えたり、靴下を履いたりは、できるようになりました。簡単な家事もできます。やはり来週までには歌手としてステージに立てるくらいには回復できそうです!

血液検査もしたのですが、1週間ちょっとでヘモグロビンの数値が5も回復し、急性の貧血状態から、女性の平均値よりも値が高いくらいになりました!ヘモグロビンの超回復、こんなことあるんですか!?とドクターに聞いたら、いやーあるんですねー、と不思議そうに笑っていました。ヘモグロビンの数値って、毎日鉄剤を飲んだとしても、1上げるのに1ヶ月くらいかかるって聞いていたのですが…どういうこと!?入院中に輸血しても一回の輸血で0.5ずつくらいしか上がらなかったのに…。日々アサイードリンクやら牛肉やらを運んでくれた家族と、私の体の中をいつも整えて下さっているオルタナティヴメディスン、ボディワークの先生のおかげだと思います。何事にも天才はいるのです。確かに、3日くらい前から貧血頭痛がしなくなってきてはいました。

いろいろと発見したこと。野菜を切るのにも結構な腹筋を使っていたこと。ベッドから起き上がるのにもかなりお腹の力が必要だということ。近所にお買い物や食事に行って帰ってきてもそんなに消耗しないのですが、冬瓜を切ったりピーラーで剥くだけでめちゃくちゃ疲れたこと(ウリ科の硬さおそるべし!)。冬瓜で懲りたので、まだカボチャには手を出せず(笑)交感神経が優位になりがちで眠るのが苦手だった私が毎日すぐ眠くなってしまうこと。

さらに人生初の手術日のことを振り返ってみます。

術後、手術室から病室に運ばれてきた私は全身麻酔から少しずつ意識が戻ってきたところ。これは初めて知ったことですが、全身麻酔後、もう意識が戻ってきていても、まだ目を開けることも体を動かすこともできない状態というのがあるのです。意識だけが復活した状態で私が聞いた言葉。「先生、出血が止まらないんです」

まだ目も開けられず、喋ることもできない、耳から聞こえる情報は認識できる。ああ、私は今出血が止まらない状態なのかと、ぼんやり思う。バタバタと道具を持ってきたナースに針の形やサイズが違う、と怒るドクター。その直後、おへそに激痛が走る。出血箇所を縫い出した模様。私はここでか細いながらもなんとか声を出すことができるようになる。「痛い、痛いです…」部分麻酔を追加。続く激痛。なんとか縫い終え、出血も止まったらしい。人生の中で頂点の痛み体験でした。

後からもっと意識がしっかりした後に聞いたドクターとナースの話を総合するに、手術が無事に終わり、止血できたことも確認し、私が病室へ運ばれた後に、おへその部分からの出血が急に始まり止まらなくなったとのこと。腹腔鏡手術では、おへそから炭酸ガスを入れてお腹を膨らませて手術をし易くしたり、内視鏡を入れて腹腔の状態をモニターに映したりします。なのでもちろん切開の傷口はあるのですが、そこからの出血が急に再開し、なかなか止まらなかったとのこと。移動やいろんな管を抜き差しする中で、術後に急に血圧が上がったりして再度出血することはたまにあるそうです。

確かに既にかなり出血してきている中で、私自身は激痛を味わうことになったとしても、失う血の量をできるだけ少なくする為には、できるだけ速く処置しないといけない。何らかの連絡ミスで医師の意図とは違う針が届いてしまったけど、また取りに行く数分を待つよりは、今ある道具でそのまま縫う方がよかったのだろうと思います。別の針でも痛みの具合はさほど変わらなかったのかもしれないし、とにかく血を止めることが先決で、部分麻酔が完全に効くまで待つほどの時間も出血量を考えるとなかったのかもしれない。

それから、手術直後のあの感覚。術後の腹部の痛み、慣れないカテーテルの心地悪さ、体が揺れて地震かと思うほどの貧血による動悸(でも実際に震度2くらいの地震もあったみたいで余計に混乱)、酸素マスクの苦しさ(測ると酸素飽和度は高いのになぜか私は苦しい苦しいと訴え続けていた)膝下に装着された血栓症を防ぐ為のマッサージ器が蠢き続ける不快な感覚と音。中枢性鎮痛剤のペンタゾシンを点滴に注入してもらうまでは本当に辛かった。ペンタゾシンによって、うとうとして半分夢の世界に意識を飛ばすことができると急に楽になる。ずっとペンタゾシンの影響下にいたかったけれど、21時くらいに効果が切れてくる。ナースいわく「このお薬は使いすぎると呼吸が弱くなってしまったりして副作用がこわいので、次に注入できるのは0時です」。がーん、あと3時間は私の意識はひとりでここにいるのか…。

このとき体がほとんど動かせない私が考えていたことは、私の意識はいつもと同じでいろいろなことを考えることができる。でも体が動かせなければ、喋ることさえままならなければ、指さえ動かせることができなければ、私の意識を外部に伝えることもできない。いや、いつもと同じ意識と思っていても、かなりの部分が痛みに捉われてしまって、深い思考はできなくなっているのかもしれない。私の意識は私の弱った肉体に閉じ込められている。いつまで私はこの状態に閉じ込められたままなのであろうか。ナースは、順調にいけば、段階的に管や器具を外して、明日にはカテーテルを外して、自分で歩くこともできるようになると言う。ではこの身体感覚に耐えないといけないのはあと十数時間で、そんなに長くは続かないはず…。はたしてこの十数時間は、体感的に、今までの人生の中で、いちばん長い十数時間でした。

肉体でなくて意識が私の本体なのであれば、意識にとってこれは長く耐えられることではないと思いました。そして、これは全くネガティヴな意味でなくて、ポジティヴな意味で、と前置きしますが、尊厳死、安楽死、もしくは自死やそれに値するもの。全てを一緒くたにしてはなりませんが、これらに共通する、自分で自分の肉体を消失させるという行為に至らざるを得ないほど辛い身体の状態が人に訪れることもあるのだ、ということを垣間見ました。

私は現時点では特定の宗教を信仰していませんが、なんとなく魂のようなものは存在して、生まれ変わりもあるのではないかしら、という世界観で生きています。自らの肉体が消えることがその人にとっては魂の解放になることもあるのかもしれない。そういう選択を取らざるを得なかった身近な人の行為を前よりは少しだけ理解できたような気がします。でもエゴイスティックな私には、今自分の周りにいる大切な人たちが、今後そういう選択肢を取らざるを得ない状況に追い込まれることがありませんように、と願ってしまう気持ちも多分にあるのですが。

初めての入院&手術に加えてこれほどの身体的な痛みと苦しみも初めてのことで、何もかもが初体験尽くしでした。ベッドから起き上がれた喜び、カテーテルが外れた後(無事翌日には外れました)歩けるようになった喜び、3日ぶりにシャワーを浴びたときの快感。自発呼吸ができて、歩行できて、食事が摂れる、もうこれでじゅうぶんだ、というプリミティヴな、生きていることそのものへの感謝。

私なりに生と死の狭間の体験をしたと思い、浮世に戻って来てみると、相変わらず大なり小なり人間同士の諍いが絶えなかったりする。特定の宗教を持たない私ですが、宗教のことを調べたり本で読んだりするのは好きです。仏教においては、苦しみの原因のひとつに無知無明があると言います。でも正しい智慧を育むことによって、苦しみを滅することができる。無知無明とは、ものごとが無常であることや正しい教えを知らない状態を指すそうです。無知無明は癡とも称され、仏教における三毒の中でも最も根本的な煩悩であります。

どんな立場の人であっても、思考を停止し、ものごとを自分の都合のよいように解釈し、真実を見ないようにすることは、やはり罪深いと思う。それで不当な扱いを受ける人がいる。何よりも自分の魂が穢れてしまう。

私自身、自分の中の、ものごとの歪んだ解釈や、自分への虚偽の申告に気づかなければいけない。そしてなぜ私はそういう認識に至らざるを得なかったのか?そこを考える。今まで傷ついてきた経験ゆえなのか、自分のよくないところを認められない弱さからなのか、楽な方向に流れてしまっていないか、利益欲しさに合理化していないか、面倒だからと適当に扱っていないか、未熟で頭の動きが鈍いせいなのか、愚かな自分を自覚することがおそろしいのか。

自分のよくないところを自覚したときに、過ぎた自己嫌悪や自傷に向かうのもナルシシズム。自分との距離が近すぎる。それではものごとの本質が見えなくなる。全ては無常であり、自分は全体の一部であり、ひいては全体そのものであるのだという智慧があったならば、美しい花や小鳥を愛でるように自分自身や他者を愛でることができる。愛でることはただ甘やかすことではない。自他どちらでもよくないところがあったら認識することによって改善法を探ることができる。自分にとって必要のない感情や感覚であったならば手放してゆくことができる。何事においてもまずは逃げずに真実を見つめることが全ての始まりになる。

占星術好きの方はご存じ、これからは風の時代じゃないですか。嘘や幻想が強かった時代は終わり、真実がいちばん強いという時代への過渡期が今だそうです。ほんとうがいちばん強い。だからこれをここまで読んで下さった奇特な貴方が、ご自身の真実に誠実であれますように。そしたらきっと良いことあるよ。もし嘘をつく場合は絶対にばれない嘘を、墓場まで持っていく覚悟で。そしたらそれはほんとうの嘘になって、真実になるのです。

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【💫主な出演予定💫】

◆8/6(火)関内Ben Tenuto
Blossom Dearie特集
ユニットThe Lost Sweetsとして出演
ジャズライブとDJ, 解説、プログラム付き
浅川太平(Pf)

◆8/9(金)関内Venus
Venus Sistersコーラスライブ!

◆8/16(金)サロンdeおむすび横浜
初出演💖関内駅北口が最寄り、トライベッカがあったところです
松本曹史(Gt & Vo), 小島幸華(Tp), 朝倉由里(Pf), 神吉尚(Ds)

◆8/22(木)関内Venus
去年に続いて気怠い夏特集✨
ボサノヴァや夏の曲をたっぷりと🏝
浅川太平(Pf)

◆9/6(金)名古屋Swing
久しぶりに大好きな名古屋へ遠征です
鈴木靖子(Vo) 浅川太平(Pf)

◆9/14(土)代々木NARU
老舗ジャズクラブへ初出演💖
文舒(Vo), 片貝晴美(Vo), 廣田ゆり(Pf), 佐藤きりん(Ba)

◆9/26(木)おむすびJAZZ神楽坂
出演2回目です!
大橋祐子(Pf)他
わーい、祐子さんと一緒だよー♪

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