超訳Blossom’s Blues

約束どおり!?Blossom’s Bluesを訳してみたよ!この曲は8/6(火)関内Ben TenutoでのBlossom Dearie特集で歌う予定🌷

歌詞が、私の名前はブロッサム〜♫ って始まるんだけど、実は私も同じ名前なのです。
※(”blossom”は「咲く」という意味の動詞なので、日本語の名前にしたらそのまま「さき」)

………………………………………
“Blossom’s Blues”
Written by Blossom Dearie

My name is Blossom
I was raised in a lion’s den
My name is Blossom
I was raised in a lion’s den(*1)
私の名前はブロッサム
ライオンの巣で育ったの
私の名前はブロッサム
ライオンの巣で育ったの

My nightly occupation
Stealing other women’s men
I’m an evil evil woman
But I want to do a man some good
I’m an evil evil woman
But I want to do a man some good
I’m “Gina” Lollobrigida(*2)
I ain’t red riding hood
私の夜の仕事は
他の女の子の男のひとを盗むこと
私って悪い悪い女なの
でも男のひとをいい気持ちにさせてあげたい
私ってとびきりのいい女なの
赤ずきんちゃんじゃないのよ

If you don’t like my peaches, baby, why do you shake my tree?
If you don’t like my peaches, baby, why do you shake my tree?
Get out of my orchard, baby
Let my peach tree be
もし貴方が私の桃をすきじゃないなら
どうして木を揺らすの?
もし貴方が私の桃をすきじゃないなら
どうして木を揺らすの?
いやなら果樹園から出ていって
私の桃の木にはすきにやらせてよね

Now don’t you ooh skooya doo skooya dee
And I won’t ya ya doo doo doo doo
If you don’t ooh skooya doo skooya dee
Then I won’t ya ya doo doo doo doo
So don’t you ooh skooya doo skooya dee
And I won’t ya ya doo doo doo doo
ねえ今すぐあれをやって
私はあれをしないから
もしあなたがあれをしないなら
それなら私もしないからね
だからねえあれをやって
私からはしないからね

Some men like me cause I’m happy
Some think I’m snappy
Some call me honey
And some think I’ve got money
But Ray Brown told me I was built for speed (*3)
男の人たちはたいてい私のことがすき
私はごきげんだから
ある人は私がクールだって思ってる
ある人は私が可愛いって思ってる
ある人は私がお金には困ってないって思ってる
でもレイ・ブラウンは言うの
私は生まれつきのスピード狂だって

You put them all together
Everything a good man needs
You put them all together
Everything a good man needs
今言ったこと全部かけ合わせるとね
私の中にはいい男が必要とする全てがある
今言ったこと全部かけ合わせるとね
私はいい男が必要とする全て
………………………………………

【訳註】
(*1) ギル・エヴァンスのアパートに入り浸って猛獣のようなビバッパーたちとつるんでいたくらいですからね。

(*2)
“Gina” Lollobrigidaはイタリア出身ハリウッド黄金期のセックス・シンボルのひとり。1950-60年代には世界でいちばん美しい女性と謳われた。日本の素敵なドラァグ・クイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんのお名前はここに由来するのでは。

(*3)
レイ・ブラウンはエラ・フィッツジェラルドの元夫でチャーリー・パーカーとかディジー・ギレスピーとかオスカー・ピーターソンとかデューク・エリントンとかと一緒に演奏していた凄腕のダブルベースのベーシスト。この曲が収録されたブロッサム・ディアリーのヴァーヴからの1stで演奏しています。この人にスピード狂と言われるブロッサム…!

………………………………………

【ライブのお知らせNext Show on Aug 6th】
8/6(火)関内Ben Tenuto, Kannai
🌷The Lost Sweets Plays Blossom Dearie🌹

ユニットThe Lost Sweetsの次回のイベントのテーマはブロッサム・ディアリー🌸

Saki Kato加藤咲希Vo & DJ
Taihei Asakawa浅川太平 Pf

Open 18:30
1st 19:30 DJ SET
2nd 20:00 PIANO SOLO SET
3rd 20:50 VOCAL SET

MC adv予約 ¥3000 / door当日 ¥3500
+TC ¥500

DJタイム&楽曲解説、ピアノソロ、ヴォーカルライブ、プログラム付き❣️

関内Ben Tenuto
https://ben-tenuto.owst.jp
横浜市中区弁天通3-48
Tel: 045-263-6778

………………………………………

【💫主な出演予定💫】

◆7/2(火)関内Venus
裕美ママBirth Day Eve
コーラスグループVenus Sistersとして出演

◆8/6(火)関内Ben Tenuto
Blossom Dearie特集
ユニットThe Lost Sweetsとして出演
ジャズライブとDJ, 解説、プログラム付き

◆8/16(金)サロンdeおむすび横浜
初出演!関内駅北口が最寄り
トライベッカがあったところです

◆8/22(木)関内Venus
超絶めずらしく日本語の曲特集予定
松本隆さんの作詞は素晴らしいですね

◆9/6(金)名古屋Swing
久しぶりに大好きな名古屋へ遠征です
鈴木靖子(Vo) 浅川太平(Pf)

◆9/14(土)代々木NARU 初出演!
老舗ジャズクラブへ初出演、応援よろしくお願いします!

※英語個人レッスンの受付を再開しました※
日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

8/6 Blossom Dearie特集!

【ライブのお知らせNext Show on Aug 6th】
8/6(火)関内Ben Tenuto, Kannai
🌷The Lost Sweets Plays Blossom Dearie🌹

ユニットThe Lost Sweetsの次回のイベントのテーマはブロッサム・ディアリー🌸

Saki Kato加藤咲希Vo & DJ
Taihei Asakawa浅川太平 Pf & Key

Open 18:30
1st 19:30 DJ SET
2nd 20:00 PIANO SOLO SET
3rd 20:50 VOCAL SET

MC adv予約 ¥3000 / door当日 ¥3500
+TC ¥500

DJタイム&楽曲解説、ピアノソロ、ヴォーカルライブ、プログラム付き❣️

関内Ben Tenuto
https://ben-tenuto.owst.jp
横浜市中区弁天通3-48
Tel: 045-263-6778

言わずと知れた弾き語りの歌姫、Blossom Dearie。あまりにも独特でキュートな歌声が印象的。そのファニーヴォイスに隠れて聞き落とされがちですが、実はピアノも歌もめちゃくちゃ上手い。タイムもピッチもものすごいところにいます。正確性と独創性。

声と容姿は激可愛なのですが、一皮めくってみれば、ギル・エヴァンスのアパートに入り浸って錚々たるビバッパー達とつるんでいたり、あのビル・エヴァンスもブロッサムのヴォイシングを参考にしたという発言をしていますし、マイルスに至ってはブロッサムが自らの演奏中に喋っていたオーディエンスをうるさいから黙ってと牽制した彼女の態度に心底驚いたという逸話があります。

ヴォイストレーナーにあなたの発声は呼吸法がよくないからそういう変わった声になっている、ヴォイストレーニングをするべきだと言われても全く意に介さなさったとか。

1957年にヴァーヴから出した初のソロアルバムの中に入っている自作曲Blossom’s Bluesの歌詞もすごい。最初だけ訳してみるとこんな感じ。

………………………………………
私はライオンの巣で育ったの
夜の仕事は他の女の子の男のひとを盗むこと
私って悪い女なの
でも男のひとをいい気持ちにさせてあげたい
私はいろんな顔を持ってるの
でも赤ずきんちゃんじゃないのよ
………………………………………

これを自分で書いてあの声と容姿と実力で歌う妙。ユーモラスで露悪的。歌詞の最後の方にはレイ・ブラウンのエピソードが出てきたりします。ほんとこの歌詞面白いので後で全訳を書いてアップしたいと思います!

どう考えてもかな〜り気が強かったであろうブロッサム、調べれば調べるほど最高。ライブはもちろん、DJ&解説もお楽しみに❤︎

【The Lost Sweetsとは】
本、映画、気になる出来事、古今東西あらゆる素敵なカルチャーをリミックス、スウィングしながら皆さんと一緒に楽しく再読することを目標とし、毎回ひとつのテーマを掲げ、DJや解説を織り交ぜ、プログラム付きの一風変わったライブを開催。今までのテーマは、ビリー・ホリデイ、フランソワーズ・サガン、ソフィア・コッポラ、パールストリートのクレイジー女たち、等。

9/6(金)名古屋Swing出演決定! 

【9/6(金)名古屋Swing出演決定!】

嬉しいご報告があります💖 
約2年半ぶりに大好きな名古屋へ遠征が決まりました✨ 9/6(金)名古屋Swingに出演させていただきます♫ http://jazzspotswing.com

共演は先日とあるイベントで仲良くなった素敵なシンガー鈴木靖子ちゃん🎙そしてユニットThe Lost Sweetsでも一緒に活動しているピアニスト浅川太平さんです🎹

私と浅川さんが名古屋に出演させていただくこと自体がめずらしいですが、靖子ちゃんとは2声のジャズコーラスアレンジ曲にも挑戦する予定です👭 
普段は私は横浜、靖子ちゃんは名古屋エリアに活動拠点があるので、滅多にできない、かなりめずらしい内容のライブになると思います✨

久しぶりの名古屋遠征、ほんとうに嬉しいです💕名古屋エリアの皆さまにお会いできることを心待ちにしております🫶🏻

ご予約は、私、出演メンバー、お店の方でも承っております♫

【💫主な出演予定💫】

◆7/2(火)関内Venus
裕美ママBirthday Eve💐
コーラスグループVenus Sistersとして出演

◆8/6(火)関内Ben Tenuto
🌸Blossom Dearie特集🌸
ユニットThe Lost Sweets🍫として出演
ジャズライブとDJ, 解説、プログラム付き

◆8/16(金)サロンdeおむすび横浜
初出演❣️関内駅北口が最寄り🚶‍♀️
トライベッカがあったところです〜

◆8/22(木)関内Venus
超絶めずらしく日本語の曲特集予定
松本隆さんの作詞は素晴らしいですね✒︎

◆9/6(金)✨名古屋Swing✨
久しぶりに大好きな名古屋へ遠征です❤️
鈴木靖子(Vo) 浅川太平(Pf)

◆9/14(土)代々木NARU 初出演❣️
老舗ジャズクラブへ初出演、応援よろしくお願いします🫶🏻💕

※英語個人レッスンの受付を再開しました※日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

おむすびJAZZ神楽坂御礼

6/7はおむすびJAZZ神楽坂に初出演でした❣️お越し下さった皆さまありがとうございました✨

いつものジャズに加えて、普段は歌わない日本語の曲を歌ってみたり、とても新鮮な体験をさせていただきました🙏初めてお会いした古川琴子さんはピアノもお歌もお人柄もふんわりとお優しく素敵で癒されました…☘️💕

そしてママのSasammyさんに初登場のお客様たちも次々と魅了されていました✨華やかなステージングと張りのあるお声、おしゃれでお喋りも楽しく、繊細な気遣いもすばらしいママさん🌟

もう一生分のお酒を飲んだと思い(ほんとか😆!?)特に歌うときは全くお酒を飲まなくなった私ですが、オフの日に東京で飲みに行きたくなったらふらっと遊びに行きたいなと思いました🍹

次回、おむすびグループには、先日グランドオープンしたばかり🎉の関内の店舗、

サロンdeおむすびYOKOHAMAに8/16(金)出演させていただきます🙏❣️

場所は、関内駅北口出て真っ直ぐ、老舗鰻屋さんのわかなを通り過ぎて、ロイヤルホストの先の中小企業センタービルの地下。横浜の方はピンとくるかもしれない、そうです、私も駆け出しの頃数年間出演させていただいた、あのお店があった場所です〜🎹

横浜エリアの(もちろん他の場所からも!)音楽好きの皆さまのお越しをお待ちしております✨

ものかきのおしごと(プログラム編)

【今夜Satin Dollに私の”文章”が出演します📕✒︎】

本日6/10(月)六本木Satin Dollにて開催される浅川太平さんのピアノソロライブJazz In Literature 3。

今回もプログラムを書かせていただきました。第3回目のテーマは「フランスの文学とジャズ」。文学の中に描かれているスタンダードを実際に奏でてみるという、ピアニスト浅川太平さんの意欲的な企画です。

サルトル、サガン、バタイユ、ヴィアン、カミュといった著名な文学者/思想家の作品に加えて、たぶんまだ殆どの方が耳にしたことのないような新進気鋭の作家の興味深い作品もバランスよく盛り込まれています。

私がやらせていただいたのは、それぞれの作品を解説し、要約し、実際にスタンダードが引用されている箇所を抜粋して掲載する、という作業です。

執筆にあたって特に意識していたのは、今回取り上げている文学作品を既にお読みになっている方はもちろん、そうでない方にも、当日ライブ会場でプログラムに目を通していただくだけで、だいたいの内容が把握していただけて、この試みを存分にお楽しみいただけるように、ということです。ですから、もしご興味をお持ちくださった方は、ぜひ気負いなくお立ち寄りください。

取り上げている文学作品は合計14冊、プログラムの全文字数を数えたら13,500字以上ありました。精魂込めて書いたプログラムですが、門外不出で、このライブにお出かけくださった方のお手元にのみ、届くことになります。浅川さんと立ち上げたユニット、The Lost Sweetsのライブにいちどでもお越しくださった方ならご存じのように、こちらのユニットのライブでも毎回プログラムをご用意しておりますが、今回は文字数だけで言えば軽くその10倍程の分量になっているのではないかと思います。

あらためていちどに大量のフランス文学作品に触れて思ったのは、どの作家も、この素晴らしきフランス文学の潮流の中から生まれてきたという事実からは、意識的であれ無意識的であれ、誰ひとりとして逃れることはできないのだということです。必ず過去の作品への言及やオマージュや暗喩がある。フランス文学者たちの教養には凄まじいものがあります。そのお互いへのリスペクトや思慕や嫉妬に、私はにんまりしてしまうのです。

それから、これも一様なので驚くべきことですが、どの作家も、究めて論理的整合性が高いということです。一見、ファンタジックでふんわりとした雰囲気の作品でさえ、論理的整合性がしっかりと構築されている。フランス語という言語のなせるわざなのかもしれません。言語学の世界では、言語自体の論理性を測定することがあるのですが、フランス語の論理性は世界一だったと記憶しています。

どの訳も素晴らしく、連綿と受け継がれてきた日本のフランス語翻訳界の知の力に敬服しております。

当初は私は都合でざんねんながらライブ本番には伺えないかと思っていたのですが、急遽予定が変わり、今夜Satin Dollに伺えることになりました。オーディエンスとしてJAZZと文学の幸福なマリアージュを体感したいと思います。

最後に、プログラムの一部をちら見せ、少しだけ引用させていただきます。

……………………………………………………

ギヨーム・ミュッソ著/吉田恒雄訳『パリのアパルトマン』集英社文庫P23よりBrad Mehldau

“Lament For Linus”

 音楽のことを言葉で語るのは難しい、言葉で語れることは最初から音楽を必要としないからだ。同じく、絵画のことを言葉で語るのは難しい、言葉で語れることは最初から絵画を必要としないからだ。でもこのフランスの国民的作家は、絵画のことを言葉で、とても美しくリアルに、いかにも興味をそそるやり方で描くことができる。

 巻貝一万個の液を集めてやっと1グラム製造可能なティリアン紫、マンゴーの葉しか食べさせない雌牛の尿から精製するインディアンイエロー、ミイラを粉砕して遺体の防腐処理に使った包帯状の布に含まれる樹脂から採ったマミーブラウン、天然顔料におけるひとつひとつの色が、どんな歴史や過程を経てここに存在しているのか、というくだりひとつとっても絶品。

 川出正樹による巻末の解説によると、この小説は「現代美術をめぐる美と愛と、創造と破壊の物語」。とっても素敵なことと、とっても残酷なことが同時に起こり、エスプリの効いたたくさんの文化的引用と、ワクワクするようなディテールと、深い人物造形に満ちた極上のミステリー。果たして芸術家はその周囲や自らを削るような形でしか創作に向かうことができないのか?そしてこれはかなり極端で変わった形での、現代版『クリスマス・キャロル』でもあるのだ。

 主人公のひとり、人気劇作家で人間嫌いのガスパールは、一年に一度あえて大の苦手なパリに滞在するという自虐的なやり方で集中して作品を執筆することにしている。特にクリスマス期のパリは最悪だ。

“到着ロビーは異常な混雑で、ガスパールは抱きあってキスをしている男女を押しのけ、床に寝転がっている人をまたいで先に進んだ。視界の中に突然 ”タクシー乗り場” と書かれた開店ドアが現れた。あとほんの数メートルで悪夢は終わってくれる。タクシーに乗ったらヘッドフォンをとり出し、そのままブラッド・メルドーのピアノとラリー・グレナディアのベースの調べに逃げこむつもりだ。”

……………………………………………………

フランソワーズ・サガン著/朝吹登水子訳『すばらしい雲』新潮文庫P80より

Jerome Kehn “Old Man River”

 くらくらするほど濃密で残酷な共依存関係の夫婦のやりとり。恋愛というのは逆説的に、おそろしく理性的な人間か、あるいは殆ど恋愛を必要としない者にしか上手くやりこなせないのではないかとさえ思えてくる。18歳のときに『悲しみよこんにちは』で鮮烈なデビューを果たし一躍フランス文学界の寵児となった恋愛小説の名手による第5作目の長編。風変わりな題はボードレールの詩「異邦人」からの引用である。

 美しいアメリカ人男性のアランと結婚したフランス人のジョゼ。アランからの執拗な嫉妬、言い争い、恋の行為。「《結局、君はこれが好きなんだろう?》とある日、特に長い喧嘩のあとでアランが言った。ジョゼは愕然としてアランをみつめた。たしかに彼女はこういうことが好きになってしまったのかもしれない。独立したひとりの人間としてでなく病的な恋愛の対象であるひとつの無力な物として扱われることが……。(中略)否、彼女は男の執念の対象とならずに、ひとりの男性と人生を分かちたかったのだ。(P41)」

 アランから逃げるようにひとりNYからフランスに帰国したジョゼ。しかし友人のベルナールに居場所を突き止められてしまい、パーティーへの誘いを受ける。渋々出かけていった先ではこれから黒人歌手が歌うところ。パリの中産階級達は黒人歌手なら良い歌が歌えるに違いないと思い込んでいるのだ。

“その時、人影がよろめいてジョゼの傍に座った。歌手は悲しげに「オールド・マンリヴァー」とアナウンスし、誰かが「ブラヴォ」と叫んだ。歌手は歌いはじめた。歌手は黒人なので人々はすぐに彼の才能を信じこみ、座はしんとした。(中略)《へたな歌だね》とアランの低い声が言い、ジョゼは彼の方にふりむいた。

 彼らの視線はかち合い、気まずく、取乱して相手をじっとみつめ合った。なつかしさをもって相手を認めると同時に相手を否定しながら……。そこには愛想の良さと、偽りの驚きと、恨みと恐怖とが混っていた。おのおの、相手の瞳のはっきりした輝き、あまりにもよく知りすぎているその顔立ち、唇の病的な沈黙のわななきしか見ていなかった。

「どこにいたんだ?ーどうして来たの?ーよくも僕を捨てられたね?ーこれ以上私に何を要求するのよ?」これらすべてがあらあらしく「オールド・マン・リヴァー」の歌詞にとって変った。”

……………………………………………………

少しだけというか、全体の1/7以下だけでこの文章量なのですが(笑)

ね、面白そうでしょう?

皆さまの今夜が素敵なものでありますように。

6/4Venus出演御礼

昨晩は関内Venusに出演でした✨お越し下さった皆さまありがとうございました💖

ボーカルエフェクターを使ってのライブは2回目でしたが、だんだんできることが増えていって嬉しいです🌈🦄お店の環境によってもかなり音が左右されるので、それぞれ出演させていただく場所でのベストなセッティングを体感していくことが大切ですね〜❣️

ギタリスト、寺屋ナオさんとのデュオ共演は初めてでした♫攻め攻めスウィングのときにも後ろに引っ張ってくれるグルーヴ感、バラードで静かに歌いたいときの音数を絞った空間作りの美しさ、ジャズはもちろん、ボサノヴァ、ポップ、日本語の曲も全て瞬時にやりたいことをわかって下さり、休憩中は面白トークに引き込まれ、全てのキーを愛しているという博愛主義のナオさんの歌伴の素晴らしさを堪能させていただいた一夜でした。。。💎✨

次回ナオさんとの共演は同じく関内Venusにて、7/2(火)裕美ママの誕生日イヴに、コーラスグループVenus Sistersとして出演します❤️💙💚
盛り上がること間違いなし!ご予約はお早めにどうぞ🌟

嘘みたいな本当の話 

数年前ツアーに出ていた私は絶望していた。世界はかなしみに満ち満ちているのだから、誰でもいつでも簡単に絶望することができる。

ニュースを見て絶望。仕事で絶望。景気で絶望、失恋で絶望。家庭の絶望。無能の絶望。凡才の絶望。天才の絶望。貧困の、飢餓の、戦争の、犯罪の、思想の、無知の、抑圧の、嫉妬の、無価値感の、科学の、AIの、自然破壊の、監視社会の、経済の、政治の、陰謀の、宗教の、睡眠不足の、成績不審の、精神の、身体の、病の、ウィルスの、喪失の、老いの、孤独の、馬鹿の、秘密の、嘘の、芸術の、うたかたの、性の、愛の過剰の、愛の不在の絶望、絶望の絶望による絶望の為の絶望、箸が転がっても絶望、どこを切っても絶望の金太郎飴、絶望先生。絶望しない理由が見つからない。

でも人は簡単なゲームや単純なストーリーにはすぐに飽きてしまうので、これは(勝ち負けがあるとすればだけど)幸福感や安心感を持続させた者が勝つように作られたゲームなのかもしれない。出自や環境や身体/精神的な特徴や起きた出来事が過酷な者は、ゲームの難易度を高く設定して生まれてきた勇敢な戦士なのだとしたら。(私は魔法使いか踊り子になりたい)

ツアーの話に戻る。ツアーで奏でた音楽も、オーディエンスも最高だった。「どんな音楽も、音楽は、鳴らされた瞬間から必ず素晴らしい」。私が絶望していたのは上記全ての影響とも言えるし、特に自らの身体的特徴に対してで、あのとき私はとても忙しくしていて(そうしないと何でもゆっくりしている私は自分の人生に自分が間に合わなかった)充実した日々を送っていたとも言えるけれど、忙しくすればするほど、眠れなくなっていった。

私はすぐ交感神経が優位に立ってしまうタイプなので、集中すればするほど、仕事をすればするほど眠れなくなる。同じタイプの脳の方にはこの感覚をわかってもらえると思うけれど、これは穏やか(?)でゆったりしている私のパーソナリティとは切り離して考えるべき、ただの身体的な特徴なのだ。自覚してはいたのだけれども、あのときはどうしても睡眠導入剤を処方してもらいに病院に行く時間さえなかった。ツアー前後は事務処理で忙しくしていても、いったんツアーに出てしまえば、あとは移動とパフォーマンスと宿泊と移動だけ。その夜、ホテルの一室で、体は凄く疲れているのに結局一睡もできなかったことに私は絶望していた。人は睡眠中にストレス処理をしているので眠れないと脳のゴミが溜まっていくし、成長ホルモンがじゅうぶんに分泌されず、疲労も回復しない。

そのとき、母からLINEが来た。これ読んでみて、というメッセージとともに、占星術サイトのリンクが貼られていた。誕生日を入力すると、その誕生日の人は、どの誕生日の日と相性が良いかがわかるという、よくある仕様。母は自分の誕生日を占った後に、娘たちの誕生日も占ってみたのだという。私の誕生日を入力して出た結果は…

一番目の運命の人: 母
二番目の運命の人: 父
カルマメイト: 元夫
上司にするとよい人: 当時の音楽理論の師匠で現在所属している音楽制作団体の長
恋人にするとよい人: 当時好きだった人

これだけの項目が全て合致していた。こんな偶然。勧誘とか、個人情報漏れとか、壺を買わされるとか、疑ってもよいかもしれないような結果である。でもこれは誰のどのブラウザを使っても同じ結果で、もちろんこの後何の勧誘もない。入力したのは自分の誕生日の日付だけ。そういえば当時好きだった人のことは私の中の秘め事で誰にも話していなかったし、新音楽制作工房もまだ始まっていなかった。母はただ一番目と二番目の運命の人の結果を面白いと思って連絡してきたので、それ以外の登場人物の誕生日は彼女の預かり知らぬところ。

元から占星術に関しては統計学で何千年もかけて精査されてきた先人の優れた知恵だと思っていたけれど(少しの気圧の変化で体調が変わる小さな私たちがあんなに大きな天体の影響を受けないと考える方が非合理じゃないだろうか)、こんなにあからさまな結果が出るとは、とても愉快な気持ちになった。なんてわかりやすい、おもちゃみたいな人生!自分が『トゥルーマン・ショー』のトゥルーマンになったような、マトリックスにいるみたいな気持ち。ねえやっぱりこれってRPGゲームか映画かなんかなんじゃないの?

そこで私は、もしある程度のシナリオが存在し得るなら、自分で自分をコントロールしようなんて、しなくてもよいのだなと思った。ここの言い回しが難しいのだけれど、人は強靭な意志を持って人生をコントロールすることはある程度はできると思う。それができるのは本当に凄いことだ。映画『ガタカ』みたいな感じね。でもわざわざ全員がそれをする必要もない。人生に対してできることは、やるべきだと感じることを常に選び取っていくことで、あとはそれを遂行する為に必要な微調整を試みるくらいでもよいのではないか。たぶんそれぞれに割り当てられた役割がある。酷く複雑な相互作用を持つ小さな個体たちの集合体は全体でひとつ。

たくさん集中した後、眠れなくても仕方ない、だって私はそういう風に生まれついたのだもの (by Lady GAGA)。でも倒れないように、できるだけ日の光を浴びて、メラトニンの生成を促して、適度な運動をしたりして、就寝時間前のブルーライトはなるべく避けて、必要なときはお薬の力も借りて、可能な範囲で眠っていけばよいのだわ。

簡単なゲームや単純なストーリーは面白くない。好奇心が刺激されるようなある程度複雑なストーリーが好き。この絶望ゲームをクリアする為には、一定ラインの幸福感の持続が必要で、私は日々手を替え品を替えそれに挑んで花を飾ったり、海に行ったり、愛を伝えたりし、薄氷の上を歩き、どうしたらクリアできるのか人体実験、なんとかハッピーエンドまで辿り着くことを試みている。

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

Instagram – 写真中心
https://www.instagram.com/saki_kato_sings?igsh=NmlpMjBtMWk3N3l5

X (旧Twitter) – 他のSNSに書いてないことも結構いろいろ呟いてます
https://x.com/saki_kato_sings?s=21&t=oPbks420pqP_TWO-4Ot2qw

音楽と言葉の体感

とあるお仕事の為、一気に文学作品を読んでいる(日々上げているのは趣味の本とか)。活字に触れられるしあわせ。私はたぶん、いわゆる活字中毒というやつなので、音楽活動の妨げになってはいけないと、歌の仕事をさせていただくようになってからは意図的に読書を避けていた。謎の禁欲精神と看做されるかもしれないけれど、そうしないといけないと思うほどに私は不器用だった。誤解を恐れずに言えば、自らの適性を顧みて、音よりも弁が立ってしまう状況を避けたかった。

でも2021年に加藤咲希名義のジャズボーカルアルバムと、2023年にLilla Flicka名義のSSWとしてのポップアルバムをリリースして、音楽家として自分が良いと思える双生児作品を世に出せたこと、さらにその直後に父の他界とそれにまつわる精神的な疲弊と膨大な事務手続きを経験した後、もう好きなだけ、本を読んだり、文章を書いたりすることを自分に許すことにした。

あらためて言葉の世界に戻ってきてみると、全ての人が同じとは限らないので私にとってはと限定した上で、音楽の方が物理的にも精神的にも圧倒的に健康な世界である。

例えば安定した歌を歌い続ける為には日々のストレッチ、筋トレ、ボイトレが必要がなので、必然的にエクササイズをしなければならないし、耳であるいは全身で音を聴いて、声を使って音を発する、この振動がマッサージさながら、周波数を使って自分で自分を治療するような行為となる。

一方本を読むときは同じ姿勢が長時間続く。執筆時も同様で、振動してはむしろ本が読めないし書けない。こちらの揺らすのではなく、留めるという作業は人体にとってかなり過酷であり、別の意味でものすごい体力を必要とする。だからあの有名な某作家先生は毎日走っているに違いない。

さらにライブ活動というのはそれだけで必然的に人との交流が生まれるけれど、読んだり書いたりする作業は、それを何らかの形で発表するまではたったひとりの脳内で描かれる孤独な作業である。もちろん文字を通した先人著者たちとの交流はあるけれど、それはライブと比べるとかなり密やかな交歓だ。こちらもほとんど体が動かない。簡単に自家中毒になれる。言葉の世界はその成り立ちからしても、端的に言って、狂気の世界なのである。

今考えると、私は音楽というアンカーが存在してくれるようになったからこそ、やっと言葉の深海に躊躇なく潜っていくことができるようになったのかもしれない。もちろん拙いながらも夢中で歌手としての活動を拡張しているときにはそんなことは全く考えていなかったので、これは意図せずして得た結果である。全ての活動中の作家は何らかの形でアンカーを持っているのだと思うし、音楽家、特に脳内で書いて描いていくタイプの音楽家にとっても(つまりそれはこの文脈において作家と同義である)、何らかのアンカーを持つことは活動を続けていく為に、何よりも優先すべき最重要事項であるように思う。

【💫出演予定💫】

6/4(火)関内Venus 

6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演

7/2(火)関内Venus 

7/25(木)関内Venus

8/6(火)関内Ben Tenuto

9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

臆病なフィリフヨンカのこと

風速11メートル、嵐の中を帰ってくる。嵐のときに思い出すのはフィリフヨンカのこと。

フィリフヨンカはスウェーデン語で書かれたトーベ・ヤンソン作のムーミンシリーズに出てくる女性のキャラクターだ。彼女は神経質で、繊細で、人付き合いが苦手で、いつもびくびく何かを気にして怯えている。家のインテリアのバランスはこれでよいのか、椅子の位置ひとつをとってみても、ちょっとした埃も、物音も、何もかもが彼女を悩ませ憂鬱な気持ちにさせる。でもある日、大嵐がやってきて、一晩にして全てが壊れ、飛ばされてしまい、そのとき生まれて初めて彼女は心の平穏を得る。そんな話だった。

ムーミンはアニメ化されたことで日本でもとても人気になった。アニメも素敵だけど、原作の小説は私が思うに対象年齢は幅広く子供から大人までで、かなり深くて際どいことも題材にしている。特に孤独について。登場人物たちは、孤独を嫌ったり、抱きしめたり、愛したり、上手く付き合っていたりする。

誰でも、たったひとりで世界と対峙していて、そのやり方は人それぞれだけど、でも皆がたったひとり、という共通点によって、常にたったひとりの仲間たちが、あらゆる場所に遍在しているということになる。

写真は去年ストックホルムで撮ったもの🇸🇪

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕

恋愛アナーキスト

ずっと読みたかった川上未映子のエッセイシリーズ第一弾『発光地帯』を入手。

好きでよく読んでいる「雨あがりの少女」のブログの中でこの本の中にある文章が引用されていて、前から気になっていた。
https://note.com/ameagari/n/naec0aa0dade6

このひとは恋愛アナーキストで素敵だなあと思う。これまた大好きで少女時代から私の血肉となっている作家、江國香織は、恋愛は嗜好品だと書いていたけれど、コーヒーや、紅茶や、煙草や、アルコールや、美味しい食事や、絵や、物語や、音楽に、一生を捧げて生きて死んでゆく者もいる。もしかしたらいつか私も恋愛のあれこれを卒業する日が来るのかもしれないけれど、まずはやりきらないと卒業することもできない。どんなに聡明なひとが諭してくれてもなしのつぶてで、私は恋愛と音楽と言葉のアナーキズムに突っ込んでゆく。そうやって、感じ切って、歌い切って、描き切ることをやらないと、この人生はままならないと思っているのだった。

「二十代の初めごろ、すごく好きでちょっとのあいだであってもどうしても離れられなかった人に、独りきりでいることに耐えられないふたりなら、一緒にいつづけることなんてできないんだと何度も何度も言われたけれど、そのときはそうかもしれないと苦しみながら思ったけれど、あれはほんとうのことだったのだろうか? (中略)大事な人とは離れてはいけないのではなかったか。そうでなくてもわたしたち、いつか必ず離れてしまうときはやってくるのだったからたったいま大事に思うのならあれこれあぐねて離れてしまうことはない、世界なんかわたしとあなたでやめればいい、そしてもう一度、わたしとあなたでつくればいい。」
川上未映子『発光地帯』(P31-32中公文庫2014)

【💫出演予定💫】
6/4(火)関内Venus
6/7(金)おむすびJAZZ神楽坂💖初出演
7/2(火)関内Venus
7/25(木)関内Venus
8/6(火)関内Ben Tenuto
9/14(土)代々木NARU 💖初出演

※3年ぶりに英語個人レッスンの受付を再開しました!日常会話、ビジネス英語、受験、全て対応可。まずは体験レッスン¥3,000/1hからお気軽にどうぞ👩‍🏫📕