少女はさっそくレンタルCDショップで数あるビリー・ホリデイのアルバムの中から、何もわからないまま、憂えた女性の横顔に惹かれ、”Lady In Satin”を手に取りました。それは予想した以上にとても危険で、甘美で、エレガントで、野蛮な音楽でした。こんなに危険な音楽を頻繁に聴いてはいけない、人生がままならなくなってしまう、と感じました。今では、今でも、私は圧倒的にビリー・ホリデイが好きで、ままならない人生を送っています。
もう10日も経つのですね、あらためて10/18に赤坂dot & blueで開催した、トレヴェニアンの自伝的小説『パールストリートのクレイジー女たち』にインスパイアされたライブ、 Music From the book “The Crazyladies of Pearl Street” By Trevanian
I’m happy to announce that we created a new duo “The Lost Sweets”. We remix any lovely cultures from any times and places, then reread them happily together with you through music. Follow us on Instagram above!
アメリカ南北戦争の頃に誕生したとされるアメリカの大衆歌謡曲。舞台は南北戦争中、南部にある女性だけで運営している寄宿学校。女生徒が森の中で深く傷ついた北部の兵士を見つけ、見殺しにできず連れて帰って来る。最初は恐る恐る兵士の世話をしていた面々だが、唯一の男性の存在に少しずつぞれぞれの登場人物に変化が…、という場面で、女生徒のひとりがこの曲を口ずさむ。エルヴィス・プレスリーの”Love Me Tender”の原曲。”Aura Lee”とは、オーロラの光という意味。兵隊たちが故郷の恋人を想って歌ったとされる。「春が来て、ヤナギの上にはブラックバードがオーラリーを歌う。オーラリー、黄金の髪の少女、木々、太陽、飛び交うツバメ」
末の娘の自殺、そして四女のラックスの朝帰りで気がおかしくなった母は、娘たちを家に閉じ込めて、学校に通うことさえ禁止する。そんな中、四姉妹を慕う男の子たちは、なんとか彼女たちとコミュニケーションを取ろうとする。通常の電話は取り次いで貰えない。そこで電話をかけて、何を喋らずレコードをかけ、メッセージを送る。電話ごしに姉妹から返ってきた曲は、”So Far Away”。「あなたはとても遠いところにいる。ずっと同じ場所にいられる人なんているのかしら?もしあなたが私の部屋のまえに来てくれたら、どんなに素敵なことでしょう。でもあなたはとっても遠いところにいる。そしてそれを知ることは、なんの助けにもならない」
いきなり場面が変わってローラの結婚式。夫に促されてウェディングドレスのまま式場を抜け出すローラ。ベールを付けたままプールに飛び込む。ここまでずっとチェット・ベイカーの歌う”I Fall In Love too Easily”がかかっている。「自分は簡単に恋に落ちてしまう。その速度は速すぎるし、深すぎる、恋が永遠に続くためには」
誰かを好きになることは、君になりたい、という感覚を多分に含んでいる。だからThe Cureのロバート・スミスは”Why can’t I be you?”と歌ったのだ。しかしそれは対象と同化したいという、イノセントで、些か幼稚な願望である。
2001年にジャズボーカルとしてのデビューアルバム、”Anything Blue”を発表した後、必要に駆られ、実質上の2ndアルバムをたった1ヶ月で制作した。”Sweet and Lowdown”という、こちらはウディ・アレン監督の映画作品の中に出てくる楽曲のみで構成された作品。このアルバムに続いて、今秋はまた新たに文学作品と映画作品にインスパイアされたライブを2公演開催する。
ひとつは9/26(火)関内Ben Tenutoでのソフィア・コッポラ監督の映画音楽特集。
そしてもうひとつがこのライブ、Music from the book, “The Crazyladies of Pearl Street” by Trevanian。 江國香織氏の名訳『パールストリートのクレイジー女たち』で日本でも広く知られることとなったトレヴェニアンの自伝的小説であり、遺作である。