横浜ジャズ界、橋本宏之先生のこと

橋本宏之先生が亡くなった。めちゃくちゃかっこいいピアニストさんだった。関内Speak Lowのハウスピアニストを何十年も!勤めあげられた方だった。

私がジャズに魅せられたのはWoody Allenと菊地成孔師匠がきっかけだったけれど、実際に歌い始めたのは関内Speak Lowで、大学4年生のときにアルバイトで入ったことがきっかけだった。今でも覚えている、どきどきしながら電話をかけた。れい子ママがあの独特のまったりした声で、いちおうねー、履歴書持ってきて。写真なんていいからさ、とりあえずまずおいでよ。電話をかけたとき以上に面接では緊張していた。何を着て行ったかまで鮮明に覚えている。当時まだ野口美佳がCEOだったランジェリー通販のピーチジョン、洋服も売っていたのだ。モスグリーンの、胸と背中ががばりと大きく開いたワンピースに当時のはち切れそうな体を押し込んで行った。「ジャズバー」の面接には自分の手持ちの中でも最大限に大人びた服を着て行くべきだと思ったのだ。大学4年生の最大限の背伸びだった。

面接官のれい子ママを待っている間に初老の紳士がすっと店内に入って来て、おもむろにピアノを奏で始めた。面接は1stセットの間に行われ、たったの1分ぐらいだったように思う。ふーん、大学生なの。まあ、じゃあ空いているところ入ってみて。ピアノの音がずっと流れている。私の注目がピアノにあることに気づいたれい子ママが、今日は好きなだけ聴いて行っていいよ、と言ってくれた。それが、私が初めて生の現場で聴いたジャズだ。それは、セクシーで、遊び心に満ちて、どこかもの哀しく、無骨でもあり、でもやっぱりキラキラした音楽だった。ここでバイトするんだ、こんなに素敵なピアニストさんが弾いている場所で。私はワクワクした。それから10年ほども橋本先生のピアノを聴き続け、橋本先生の伴奏で歌わせていただき、Speak Lowにお世話になるとは全く思いもよらなかった。というかジャズ歌手の末席に名を連ねることになるとは思いもよらなかった。何もかもが夢のよう。

当時私はすでにLilla Flickaというポップバンドを主宰して歌っていたけれど、ジャズは憧れの音楽で歌ってはいなかった。歌えるとも思っていなかった。でもアルバイトを続けて数ヶ月たった頃だろうか、橋本先生が言った。咲希ちゃん、何か歌ってみればいいじゃない。私が面接で言った、ポップバンドをやっているということを、橋本先生は耳にしていたのだ。誰も覚えていなかったのに。橋本先生は誰よりも記憶力がよかった。でも私はジャズは何も歌えないです。いいから、何でも伴奏するから、まずは歌ってみなさい。そうやって私はカウンター業をやりながらジャズを歌い始めた。気がついたらいつの間にかレパートリーが増え、Speak Lowに出入りするミュージシャンの方々やお客様との繋がりが自然とできていった。

私をソロのジャズ歌手としてデビューさせてくれたのも橋本先生。関内にあったJazzmen Clubでのライブに歌手として呼んで下さった。共演は息子氏、素晴らしいベーシストの鈴木健市さん。橋本先生は毎日Speak Lowでの演奏があるので、Speak Lowの演奏の合間の掛け持ちライブだった。エネルギッシュだった。私が歌手活動に専念する為に長年お世話になったSpeak Lowのバイトを辞めるときに、橋本先生がおっしゃった。いろんなたくさんの人と共演して、勉強して、大きくなってね。その後、歌手としてSpeak lowに戻り、出演させていただくようになった。

コロナ前だから、確かあれは2020年頃、セットの合間に初めて橋本先生がひとこと言ってくれた、なかなかカッコよくなって来たんじゃないの。2021年にジャズ歌手としてアルバムデビューしたときにはJAZZ JAPANの特集記事を目を細めて読んでくれた。これからだねえ。橋本先生が言った。橋本先生、私は全然まだまだです。

Speak Lowでアルバイトしていた頃、夜遅くなると、よく橋本先生が車で送ってくれた。車内ではいつもビバップが、チャーリー・パーカーがかかっていた。先生いつもビバップなんですね。飽きないねえ、馬鹿の一つ覚えで。橋本先生は、お茶目で、ひょうきんで、聡明で、お洒落で、たくさんの本を読んで、音楽を聴いて、実は最近の音楽にもかなり詳しかった。子供の頃は美空ひばりとよく遊んだとか、十代のときから親に内緒でピアニストをやってたこととか、米軍基地内での話、ハンク・ジョーンズと友達だったこととか(ホテルで演奏していたらちょうど宿泊していて仲良くなったとか)、モテモテだったこととか(先生は一切口説かない、女性が勝手に付いて来ちゃうタイプ)、とっても優しかったこと、新人にもベテランにも全く分け隔てなかったこと。

実はこっそり、橋本先生にいつかインタヴューして、日本ジャズ界の生き証人の話を伝記にしたいと思っていた。それは叶わなかったけど。でも、橋本先生が教えてくれたキラキラの活劇と、キラキラの魔法使いのピアノは、私の中に、周りの人間に、残っています。橋本先生、おつかれさまでした。ありがとうございました。

Speak Lowは業界用語で言ういわゆる夜店である。一説によるとジャズは売春宿で始まった音楽だ。売春宿で奏でられていたジャズも、日本の大学のジャズ科で習ったジャズも、NYに留学して勉強して来たジャズも、ジャズはジャズで、聴こえてくることが全てで、よい演奏、よい歌であれば、出自は全く関係ない。私は夜店出身のジャズ歌手だ。そして出自とは関係なく歌がまだまだなので、死ぬまでにはよい歌が歌えるようになりたいです。

橋本先生のfacebookのプロフィールにはこう書いてある。

「ジャズが好きでピアノを弾いております」

先生、天国でも絶対ピアノ弾いてるな。

Lilla Flicka & 新音楽制作工房『通過儀礼/Initiation』 本日デジタルリリース!

Finally, the 1st album “通過儀礼/Initiation” by Lilla Flicka & SHIN-ON-GAK has just been released digitally on all the music streaming sites all over the world🌈💜✨

遂に、Lilla Flicka & 新音楽制作工房名義の1stアルバム『通過儀礼/Initiation』があらゆる音楽配信サイトでデジタルリリースされました🌈💜✨

https://big-up.style/v5H1vxm6UU

I love you all who collaborated with me to make this album, I love you all who listen to this album in the past, right now, and in the future from the bottom of my heart. May this beautiful music save your loneliness as it saved my loneliness🌟

このアルバム制作に携わってくれた全ての方、そして過去、現在、未来におけるこのアルバムのリスナーの皆さんを、心から愛しています。この美しい音楽が、私の孤独を救ってくれたように、貴方の孤独を救いますように🌟

[Epilogue]

I felt like I would die. I don’t mean I want to die. I thought I might die since I could let this beauty out to the world. Since I did everything that I could, I thought my role in this world may have been done. But if I go to bed tonight and if I can still open my eyes tomorrow morning as I am, I’ll be very grateful. Then I swear, I’ll dedicate myself to where music and literature cross as I have done so. 

【エピローグ】

私は明日死ぬかもしれないと思う。死にたい、ではなく、死ぬのではないかと思う。こんなに美しいものを世界に表出させることができて、できることは全て最大限やって、ひとつの役目が終わったのではないかと。でももし、今夜私が眠り、明日また私として目が覚めることができたなら、感謝し、音楽と文学の交差するところに、今までもそうであったように、身を捧げて生きていくことを誓います。

2023/1/16関内ヴィナスJAZZ歌い初め

言語とは、引用、引用、引用のシステムにほかならないのです!とボルヘスは言ったとか言わないとか。音楽も人間も、というかあらゆる万物が。人間とは、引用、引用、引用のシステムにほかならないのです(神の)!著作権とか土地とか財産の所有ってまじでなんなの、と無活動無修正アナーキストは思うのでした。

私の今年の歌い初めはこちら✨

1/16(月)は、横浜のホーム、関内ヴィナスに出演します🌟
https://www.venus-hk-j.com

浅川太平(Pf.)
1st 19:40, 2nd 21:00, 3rd 22:20

ジャズボーカルとリスナーは既に知っていることだから、あたりまえすぎてわざわざ言ったりしないんだけど、新年の野暮を。浅川さんの歌伴はやばいです(もちろんdopeの意味で)。インストも全く別の方向にめちゃくちゃやばいけど。本当に周りに天才しかいなくて困ったな〜(嘘、困ってない、楽しすぎる)。天才に恵まれ続ける人生です。

写真は「新しい家族が増えました」。最近よくこのひとと一緒に寝てまーす。

Merry Christmas! コグマサウンドラインナップ☆

God Jul(もちろんスウェーデン語)
🌟🎄

ただいまカフェで作業中〜☕️
ぜんぜんしあわせ。やるべきことをやっているのですから〜😊

ふと思いついて、12/25〜26の間にKOGUMA Sound(私の自主レーベル)のグッズをご購入くださった素敵な紳士淑女の皆さまには、おひとりおひとりに宛てた手書きのクリスマスカード付きで、発送させていただきます❤️

有料ライブ動画ご購入の場合は、こちらもおひとりおひとりに宛てたボイスメッセージをネット経由でお送りします✨

ご自身への、ひいては私へのプレゼントに(お願いしますっ🙏)いかがですか😆

KOGUMA Soundショップはこちら↓
https://kogumasound.base.shop

💚グッズラインナップ💚

【有料動画】
11/29にJZ Bratで開催し、ご好評いただきました『Saki Kato Sings Woody Allen』ライブのハイライトを約40分に凝縮✨
来れなかった方も、お越しくださった方も、ぜひ❣️
https://kogumasound.base.shop/items/69950716

【CD】
Lilla Flicka & 新音楽制作工房
『通過儀礼/Initiation』¥3,000
オリジナル曲のみで構成された極上のPOPS!
https://kogumasound.base.shop/items/69350324

【CD】
加藤咲希
『Anything Blue』¥3,000
クラウドファンディングで作らせていただいた私のデビューアルバム。トオイダイスケさんプロデュース、菊地成孔さん参加。
https://kogumasound.base.shop/items/69351960

【CD】
加藤咲希/浅川太平 ¥2,000
『Sweet & Lowdown』
ウディ・アレンの映画音楽のみでスウィンギーに。できたてほやほや、ジャズシンガーとしての2枚目。
https://kogumasound.base.shop/items/69349778

【2023年版卓上カレンダー】
『When Summer Comes』¥2,000
Oscar Petersonの楽曲にインスパイアされて、夏の海で撮った撮り下ろし写真をメインに。(※残り僅か❣️)
https://kogumasound.base.shop/items/69350155

【DVD/ブルーレイ】
『The Documentary of Anything Blue』
¥6,500
デビューアルバム、『Anything Blue』の制作&ツアードキュメンタリー。
菊地成孔さん、小川恵理紗ちゃん、今をときめくミュージシャンのインタビューも✨
私がニコニコしながら不穏なことを言っているのがチャームポイント(と思っていただきたい)…。
DVD
https://kogumasound.base.shop/items/69350594

ブルーレイ
https://kogumasound.base.shop/items/69351764

ではでは、サンタさんたちの温かい応援、お待ちしておりまーす✨

多摩センターWarp初出演を終えて

ただいま〜✨
本日、多摩センターWarp出演でした🌟
初めて伺いましたが、皆さん温かく、知的で面白い方ばかり。素敵な空間でした❣️私の宇宙トークにもお付き合いくださりありがとうございます…🪐

私は西洋占星術師のマドモアゼル愛先生のファンなのですが、愛先生がYouTube動画の中でおっしゃっていました。この世でいちばん尊いのは歌なのだと。そして歌で大切なのは言葉なのだと。神を前にしたとき、物など到底何の役にも立たない。神への貢物としていちばん尊いのは歌なのだと。まごころからの歌がいちばんの贈りものだそうです。

セッションタイムの皆さんの歌と演奏を拝聴して、愛先生の言葉を思い出していました。神性はあらゆる場所に、誰しもに宿る。全ての歌が、常にギフトです。素晴らしい体験をさせてくださりありがとうございました。

壁一面の本棚には垂涎ものの興味深い本がずらり。私設図書館も兼ねているそうです。何て素敵な空間✨近所に住んでいたら通ってます。

名残惜しく帰ってまいりました。ぜひまた伺えますように🙏

『通過儀礼/Initiation』全曲✨試聴動画公開 

Lilla Flicka & 新音楽制作工房SHIN-ON-GAK

1st Album『通過儀礼/Initiation』

You can listen to all the songs in the album here! 

✨全曲✨試聴動画公開🎉🌈💟

全曲試聴はこちら⤵︎

ご購入はこちら⤵︎

https://kogumasound.base.shop/items/69350324

恋という知恵の実を食べて少女たちは大人になるーすべての心の乙女に捧げる恋愛奇譚12曲。

菊地成孔率いる音楽制作ギルド「新音楽制作工房」初のプロデュースワークとなる、バイリンガル・シンガーソングライターLilla Flicka(リッラフリッカ)の恍惚異空間POPアルバム!

みんな聴いてね〜🍓

ライブ動画販売開始のお知らせ

【✨ライブ動画販売開始のお知らせ✨】

おかげさまでご好評いただきました、2022年11月29日(火)渋谷JZ Brat で開催された“Saki Kato Sings Woody Allen” のライブ動画を有料配信させていただくことになりました❣️

たった一夜限りのスペシャルライブでしたので、日程が合わなかったり、遠方にお住まいの方からのご要望もあり、配信させていただく運びとなりました。ぜひ動画でお楽しみいただけましたら嬉しいです。

ライブのハイライトを凝縮した全7曲を収録🌟

【収録曲】

1.Cheek To Cheek

2.Poor Butterfly

3.He’s Funny That Way

4.What Is This Thing Called Love?

5.No Moon At All

6.I Can’t Believe That You’re In Love With Me

7.Sweet Georgia Brown

【出演】

加藤咲希(Vo.)

谷口英治(Cl.)

浅川太平(Pf.)

浅利史花(Gt.)

大塚義将(Ba.)

【価格】

¥2,200(税込)

ご購入下さった方には動画へのリンクをお送りいたします。

ご購入はこちらからお願いします↓

https://kogumasound.base.shop/items/69950716

フライヤーより↓

加藤咲希が自身のジャズボーカルのルーツである映画監督ウディ・アレンの作品の中で流れていた往年の名曲を歌った、一夜限りのスペシャルライブ。

共演メンバーは谷口英治(Cl)、浅利史花(Gt)、大塚義将(Ba)という日本屈指のスウィングの名手達。

全曲のオリジナルアレンジを自身のリーダー作のみならずボーカルのプロデュースワークでも才気煥発な浅川太平(Pf)が担った。

………………………………………………………

スウィングの名手の皆さまとのご機嫌なスペシャルライブ、ぜひぜひご覧下さいませ〜❣️

12/18(日)多摩センターWarp出演

ただいまー!加藤咲希名義、今年最後のソロジャズライブのお知らせです♫

12/18(日)

多摩センターWarp

OPEN 14:30

1st 15:00-15:50

2nd 16:20-17:10

入替なし 

17:30- セッション

Ticket ¥3,000

https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/021ce9nwtwn21.html

加藤咲希(vo.)

浅川太平(Pf.)

おかげさまで好評を博しました、先日渋谷JZ Bratで開催した映画監督ウディ・アレンの作品の中で流れていた往年の名曲を歌う、スペシャルライブ、クリスマス特別編です🎄❤️

初出演となります、多摩センターにあるWarpは隠れ家的なイベントスペース。

後半にはジャムセッションタイムも。もちろんライブ観覧のみの方もウェルカムです✨

ライブ後は和気藹々と一緒に楽しみましょう〜😊🎉

今年もクリスマスソングを歌う機会に恵まれて大変光栄に思います。

お越しをお待ちしております🌟

双子アルバム『Anything Blue』と『通過儀礼』

あらためて、Lilla Flicka & 新音楽制作工房名義の1stアルバム『通過儀礼/Initiation』のリリースパーティーにお越し下さった皆さまありがとうございました🌈💟✨

しばらく燃え尽きてました…

そして復活❣️

菊地成孔さん、sekiちゃん、Satōちゃん、DJアクトの皆さん凄かった、、、Lilla Flickaのアクトで共演してくれたdjaponさん、凄腕ラッパーのDTchainsawさん、素晴らしかった。感謝です。

ジャズを歌っていることによってお知り合いになれた方々もお越し下さって。あの素敵なジャズシンガーさんまで✨感激でした🥺💖

アルバム『通過儀礼/Initiation』は来年1月の全国流通に先行して、ここで販売してます🌟

https://kogumasound.base.shop/

菊地成孔さん率いる音楽制作ギルド「新音楽制作工房」のプロデュースのもと、2020年代における極上のポップスを生み出すべく!1年以上かけて、全てを込めて、丁寧に作りました。

過去、現在、未来におけるポップスの良いところ取りの全12曲。R&B、hiphop、ネオソウル、シューゲイザー、JAZZ、テクノ、現代音楽、ロック、オルタナ…

日本語と英語をベースに、スウェーデン語とポルトガル語の楽曲も。アンファンテリブル達の恐ろしいほどの才能の応酬。もうこれ以上はないという極上J-POPの最前線です。

種明かしをすると、Lilla Flicka名義のこのアルバム『通過儀礼/Initiation』は、加藤咲希名義のデビューアルバム『Anything Blue』との双子アルバムなんです。

加藤咲希とLilla Flickaがふたりでひとつなのと同じように、『Anything Blue』と『通過儀礼』もふたつでひとつ。

クラウドファンディングによる皆さまの応援でデビューアルバムが作れることになったとき、私は師匠の菊地成孔さんに相談しました。元は『Anyhting Blue』の内容は、私の今までの音楽的なルーツを年代ごとに分け、100年間の各ディケイドから1曲選んで、ジャズアレンジを施す、という、もっともっとマッシヴかつジャズとポップスが混ざった内容になる予定だったのです。それに対する菊地さんのアドヴァイスは、とてもよいと思うけれど、でもジャズサイドとポップサイドを分けてふたつ作ってもみてもいいんじゃないかな?というものでした。それを聞いて、とてもしっくりきて、ほんとうにそのとおりだと思いました。ミクスチャーは美しいけれど、いつでも何でも全部混ぜなくてもよいですよね。

私は夢見る(そして常に死と隣接している)魚座なのですが、人生に双子座が溢れているのでした。大切なものは必ずふたつある。日本語と英語、音楽と文学、日本とスウェーデン、ジャズとポップス。師匠の菊地成孔さんも『Anything Blue』のプロデューサーであり『通過儀礼/Initiation』の原案協力者でもあるトオイダイスケさんも双子座です。

そしてまず『Anything Blue』ができ上がりました。去年の夏です。このアルバムに対する想いは去年たくさん書いたので割愛しますが、『Anything Blue』のツアーをひととおり終えると、今度は『通過儀礼/Initiation』の制作に本格的に乗り出しました。

比較論になりますが、ジャズという音楽は、レコーディングのときまでに、それぞれの音楽家がどこまで何を積み上げてきたか、そしてその瞬間に何の発露があるのか、どういった環境や機材で録音するのか、というところに焦点を置く場合が多いと思います。

ポップスの場合は『Pet Sounds』の制作におけるブライアン・ウィルソンしかり、スタジオに籠もって(現代においては自室に籠もってDAW=デジタルオーディオワークステーションで)試行錯誤する作業時間が、レコーディング時間の何倍も必要な場合が多いです。『通過儀礼/initiation』の制作過程もまさしくその過程を辿りました。

しかも今回は12人のビートメイカーさんに1人1曲、制作を依頼したわけですから、そのやりとりの量は、結果として、気が遠くなるほどの膨大なものとなりました。皆さん根気強く付き合ってくださいました。

ほとんどの曲は私が作詞しましたが、他の方が歌詞をつけてくれた曲が3曲あります。素晴らしい歌詞を書いてくれた林太一さん(パンとサーカス)、Kristofer Laiosさん、花守コウさん。

全体を見通しての方向づけとコーラスアレンジをしてくださったのはジャズピアニストの浅川太平さんです。

アニメーションによる2本のMVとアルバムのアートワークはヤシマロパさん。アルバムはグッズとして持っていて楽しい、素敵な作品に仕上げてくださいました。ブックレットをめくると、一曲、一曲に対してアートワークがあり、対訳があります。

最新の宇宙人MVは影丘道さんの作品。もの凄いクオリティで、まさか監督とヘアメイクちゃんと私の3人だけで作ったなんて誰も気づくまい…。

たくさんの方々のご尽力によってこのアルバムができました。

制作に関わってくださった方、全員が恐ろしいほどの才能と個性を持っていました。

(余談ですが、菊地成孔さん、浅川太平さん、トオイダイスケさんは似ています。作風とパーソナリティーは全く違って三者三様ですが、全員異常に頭の回転が速く、直感に優れ、もの凄く判断が早く、そしてその判断は常に正しい。私は天才たちの文字どおり天賦の才を、尊敬し、畏怖し、感謝するばかりです。)

私は恋をするように、そして小説を書くようにしか音楽ができないので、出来上がったのは12篇の恋愛綺譚。

この一年、ずーっとこのアルバムを作っていました。冬、春、夏、秋。そしてまた冬がやってきました。途中コロナに罹患して、後遺症で思うように歌えず、一度レコーディングが止まりました。それでもボイトレに通い、体の治療を受け、何とか歌えるくらいまでに回復。エンジニアの向啓介さんが何とか録ってくれました。そのエンジニアさんもコロナになりました。罹患中も遠隔でミキシングしてくれました。あのとき歌録りし、ミックスした曲にはギリギリの美しさがあります。必ずしも、肉体が健康だからよい音楽ができるわけではない。

繰り返しますが、この一年、このアルバム制作と、Saki Kato Sings Woody Allenの準備のみ(つまり『Sweet & Lowdown』の準備のみ)、してきました。たくさんのライブブッキングのご依頼を断ってしまいました。友人にも家族にも会いに行けていない。ほんとうに他のことをする余裕がなかったんです。秋になって制作がいよいよ佳境に入り、配信も開始すると(今はお休みをいただいてますが)、一日二食を摂る時間もなくなり、1ヶ月で5キロ痩せました。(ダイエットしているときは全く痩せなかったのに。カミサマは酷なものです)でも、とにかくこのアルバムは今出しておかないといけなかった。

だって『Anthing Blue』はもう出てしまっているのだから。始めたことは終わらせないといけない。

(ん?夏にスウェーデンとトルコに行ってたじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、あれは自分のLilla Flickaとしてのアイデンティティを確かめる為に、そして喪失を得る為に、行かざるを得なかったので、もはや仕事の、というかアルバム制作の一部との認識です)

紋切り型の言い回しにはなりますが、捨て曲なし、とはこのことです。12曲全曲シングルカットできます。どの曲をシングルカットしたとしても、同じくらい売れたと思います。実際に6曲はシングルカットしましたが、もうアルバムが出てしまうので、全曲シングルカットはできず。というか、ほんとうに全曲シングルカットしたら、アルバム発売という概念が崩壊してしまうのでできず。とにかく聴いていただきたいです。

この音楽が必要な方のところに届きますように。音楽という錬金術を通して私の憂鬱が官能に、絶望が歓喜に生まれ変わったように、貴方の憂鬱が官能に、絶望が歓喜に生まれ変わりますように。

【💠エピローグ💠】

現実の出来事は、ある時代が終わって、次の瞬間から、すぐに次の時代が始まる、ということは少ないです。何でもモーフィングしてゆく、グラデーションなんです。徐々に変化して、いつの間にやら入れ替わっている。何かが終わる前には、既に何かが始まっていたりする。

短い間に、『Anything Blue』、『Sweet & Lowdown』、『通過儀礼/Initiation』

3枚のアルバムを出しましたが、整理すると、内実はこうです。

『Anything Blue』と『通過儀礼/Initiation』が双子アルバム、ふたつでひとつ。私のデビューアルバム2枚組です。コロナ騒動とともに始まったクラウドファンディングから約3年。3年かけてのデビューがもうすぐ完了します。

『Sweet & Lowdown』は新世界の始まり。実質上のセカンドアルバムです。

全部おすすめです。私の過去は貴方の未来、貴方の過去は私の未来だから。集合無意識下で全ては繋がっているのだと、ユング派の私は思います。だから自分のことを突き詰める。どんどん下りて、もしくは上がっていった結果、初めてそこで貴方と、世界と、繋がることができる。私はとても孤独だから、寂しくて、貴方と繋がりたくて、この作品たちを作りました。

新世界『Sweet & Lowdown』関連のライブが12/18に多摩センターでありますが、長くなってしまったので詳細はまた後ほど!

最後に、新音楽制作工房19人中『通過儀礼/Initiation』の制作に携わってくれた12人のお名前を記載したいと思います。これから世界で活躍するべき/既にしているアンファンテリブルたちです。

<伊藤佑輔/Keysa>

作詞作曲歌唱朗読たまにラップをこなす音楽家。特技は鏡文字を書くのが早いこと。

<seki>

トラックメイカー。

<高橋大地>

深夜に活動し、USビルボードチャートのTV番組を毎週欠かさず礼拝するビート提供者。得意分野は野太い低音で殴りつけるヒップホップ系。

(NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』/映画『北新宿2055』/ペペ・トルメント・アスカラールに共作曲など)

<川又僖矩>

明るいビートメイカー。

<田島浩一郎>

自称音楽家・トラック製造業。

<花守コウ>

2010年より電子音楽の楽曲制作、ライブを行う。

エレクトロニカ、テクノ、ハウスとジャンルを越境して様々なクラブイベントに参加。

ラップトップのライブに特化したイベントの副主宰、楽曲提供等、活動の幅を広げている。

<Satō>

ビートメイカー。

<OGAWA SEIJI>

コンポーザー。

<DTchainsaw>

DJ EIJI,Mummy-D(ライムスター)や菊地成孔主催イベント等へ出演。キャリア26年。ビートにスティッキーに絡む独自のリズム解釈は世界レベルでも類を見ない。唯一無二のスキルを持つリリシスト。

<djapon/ぢゃぽん>

 鹿児島生まれのブラジル帰り。サブカル拗らせ中年センチメンタリスト。「村上主義者」が高じてスワローズファン。菊地成孔スクーラーのDJ &トラックメイカー。

<上野山純平>

作曲家、トラックメイカー。

オーニソロジー、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない」に楽曲提供。

🌈Lilla Flickaレコ発の弁明🦄 

【🌈Lilla Flickaレコ発の弁明🦄】

あと二日で、Lilla Flicka & 新音楽制作工房名義の1stアルバム『通過儀礼/Initiation』がリリースされます❣️

同日、12/10(土)には青山ZEROで
このCDの発売記念ライブを開催✨

タイムテーブルはこんな感じ⏰

16:30 OPEN と同時にDJ seki
17:00 DJ 菊地成孔
18:00 Lilla Flicka & djapon
19:10 DJ Satō
20:00 CLOSE

出演するのは皆DJ✨

リッラフリッカだけ歌で、アルバムから全曲歌いますけど(笑)
全12曲収録のアルバムのオケを作ったのは皆、菊地成孔スクール出身の面々。一筋縄でいかない、でもちょうド級ポップスしか並びません。小説を書くように12曲を書きました。名付けて恍惚、異空間、私小説POP🌠

菊地成孔さん以外は2人とも女性DJです🌺
男とか、女とか、音には関係ないですけどね、心が華やぎます。2人とも今まで皆さんが聴いたことないような音楽をプレイします。

ものっ凄いざっくり言うと、DJ sekiちゃんはブラジル〜ラテン系、DJ Satōちゃんは全くHip-Hop の枠にとどまらないけどHip-Hop界からのラヴコールが止まらない超絶ビート。

とにかく、皆凄い。でも聴いて貰わないとわかんない。凄い音楽を聴きに来てくださーい、としか言えないです。

普段はジャズクラブでのジャズ鑑賞専門だけど、土曜日だから時間は作れるし、咲希ちゃんがそこまで言うならちょっと興味ある…でも「クラブ」行ったことないからドキドキ!なんか咲希ちゃん宇宙人みたいな格好しててこわいし、いやっ!というそこのアナタ!(そんな人いないかもしれないけど 笑)😆

基本的にはスタンディングになりますが、カウンター前に10席くらいはお席ございます🙏

ジャズミュージシャンの方々もこのアルバム制作に関わって下さってますし、菊地成孔さんはむしろジャズメンじゃないですか❣️
菊地さんはサックスも凄いしDJも凄いんです。

何が言いたいかっていうと、取って食べたりしないので、興味あるー、という方はぜひ明後日12/10(土)青山ZEROに集合してね✨

ではLilla Flickaの中の人、加藤咲希からでした(ペコリ)

チケットはこちら↓
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02041k58vtk21.html

そもそも加藤咲希とかリッラフリッカとか、誰?よくわからない、という方はこちら↓
https://realsound.jp/2022/12/post-1198403.html